大佛次郎原作の文芸映画。脚本は川島雄三、今村昌平。
DVD化されている。
傑作揃いの日活時代の川島映画の中でも出来のいい1本。
本作の主なロケーション地は東京と京都だが、
ラスト近く10秒くらい映るロケ地が東京・台東区の「谷中墓地」。
村上珠子(芦川いづみ)が兄・圭吉(三橋達也)の恋人だった山名久美子(新珠三千代)の
墓参りをする場面に登場する。
画面では、墓地の下を蒸気機関車(当時の国鉄)が走り、芦川いづみの後方に五重塔が見える。
この2つのカットから「谷中墓地」のロケーションであることはほぼ間違いない。
芦川いづみの後方に映っている「谷中五重塔(正式名称は天王寺五重塔)」の姿は貴重だ。
幸田露伴の小説でも有名な「谷中五重塔」は、本作の翌年・1957(昭和32)年7月の
放火心中事件で燃えてしまったので、現在の谷中墓地にはその跡しか残っていない。
「谷中墓地」には有名人のお墓がたくさんあるが、川島映画に多く出演した森繁久彌の墓も「谷中墓地」にある。
画面の左側がJR「日暮里駅」。右側がJR「鶯谷駅」。
映画の中の墓は位置的にこのあたりではないか。崖は映画当時から手を加えられているようなので、上の写真の崖下の墓の位置だと後方に谷中五重塔は見えない。
上の写真の逆のアングル。今は何も建っていないがこの正面が「谷中五重塔」が建っていた方向。
NIKKATSUのホームページには、日活作品データベースが掲載されていて日活時代の川島映画はすべて掲載されている。
本作の記述は以下参照。
『風船』
このデータベースには作品概要とともに「日活映画ロケ地マップ」が記述されていてとても参考になる。
例えば、本作のラストの京都の「盆踊り」(芦川の父・村上春樹!!=森雅之、阿蘇るい子=左幸子、芦川いづみ)のロケ地は「光照院」とある。検索すると現存している。
ただし、この「谷中墓地」はロケ地に記述されていない。